ドクターは、水で口をうるおして話を続けました。
「それでは王様、ニコチンの話にもどります。」
「タバコの煙の中に入っている、ニコチンは肺から血液の中に溶けて全身にまわります。」
「ニコチンは、おなかの背中側にある、副腎という所からカテコラミンという物質を大量に出させます。」
「カテコラミンは、全身に血液を送っている動脈という血管を細くしてしまいます。」
「ですから、タバコをすうと全身の動脈は細くなってしまうのです。赤血球は、運ばれにくくなってしまいます。」
「わかりやすく話しますと、先ほどの赤血球という名のトラックの、通る道をニコチン・ブルドーザーが壊してしまい、通れなくなってしまうのです。王様、どうなると思いますか?」
「突然質問された王様は、せきごもりながら答えられました。」
「なるほど、酸素(O2)が運ばれなくなってしまうわけじゃ。」
「そうしたら、エネルギーが作られなくなり、病気になったり、成長が遅れたりする。それでよいか。」
王様は、動揺しながら、いやいや答えられました。
「その通りです。さすがは王様。ニコチンの恐ろしさがお分かりでしょう。そして、タバコの恐ろしさがお分かりでしょう。」
王様は、頭を重たそうにたれて、長い間考えられておられました。
そして、子供がショックを受けた後に寝てしまうように、いつしかスヤスヤ眠ってしまわれました。
ドクターブックは、そっと王様のひざに毛布をかぶせ、お部屋を出ました。

3)一酸化炭素の話
翌日早くに、ドクターは王様に呼ばれました。
「ドクター、わしは一晩寝て考えた。そしてある解決策を思いついた。聞いてくれるか。」
王様は得意そうに、しかしせきこもりながら言われました。
「わしはな、ニコチンが悪いことはよくわかった。しかしタバコがそんなに悪いとは、まだ思えんのじゃ。そこで思いついたのじゃ。ニコチンの出ないタバコを作ってしまえばいいのじゃ。どうじゃわしの名案は。」
ドクターはうなりました。
「王様残念ですが、タバコの害はニコチンだけではないのです。」
王様の表情が、だんだん曇っていきます。ドクターは少しかわいそうになりましたが、続けました。
「王様、どんなタバコの煙にも、一酸化炭素(CO)という危険なガスが必ず入っています。そのこともお話しなくてはなりません。」
ドクターは王様の顔をうかがいながら続けました。
「タバコを吸うことは、一酸化炭素(CO)を大量に吸うことになります。王様、昨日はヘモグロビンのことを、お話したのを覚えておられますか。トラックの荷台の名前です。」
「この一酸化炭素(CO)は、酸素(O2)の数百倍もヘモグロビンに、くっつきやすい性格を持っています。」
ドクターは、ここで少しゆっくりと話し始めました。
「トラックの荷台に酸素(O2)を乗せようとしても、一酸化炭素(CO)がもう、いっぱいに乗ってしまっていて酸素(O2)が乗る場所がなくなっているのです。」
「もうお分かりになったと思いますが、タバコを吸うことで一酸化炭素
(CO)が酸素(O2)より先にヘモグロビンにくっついてしまい、結果的には、空のヘモグロビンがないため、酸素(O2)が全身に運ばれなくなってしまいます。
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